「この間ね、バリオスが血を流していたんですよ〜」と見せられたのが、この写真。
いやいやいや、めっちゃフォークオイル漏れてるじゃんか。ブレーキに付いたら止まらなくなるし、タイヤに付いてスリップの危険性上がるし。
というわけで、フロントフォークをオーバーホールすることに。
実車を見せてもらったら、インナーチューブがだいぶオイリー。
タイヤにもべっとり。
オイル漏れの原因は、インナーチューブにあった点サビでしょうか?
構造はVTR250やCB400SFと一緒なので、そんなに大変なものではありません。
今回はオーナーの女子が主に作業し、僕はアドバイザーという立ち位置。
準備したもの
オーバーホールにあたって準備したのがコチラ。
NTBからフロントフォークO/Hキットというものが出ており、ちょっとお得にゲットできました。
その他交換しないとなぁと考えたパーツは、純正部品とNTBのとで揃えました。純正に拘らないからできるだけコストを下げたいというご要望。
また、フォークオイルはヤマハのG-10を。これは僕の愛用品で、余った分は僕が使うのだ。それにカワサキのフォークオイルよりも安いしね。
あとは基本的な工具やケミカルの他、ネジロック剤と油面調整ツールも準備。
あとはオイルシールプッシャーもあった方がいいかも。
フロントフォークを車体から取り外し
というわけで早速フロントフォークを外していきます。
各部を緩める
まず、キャリパーのボルト・フォークボトムの割締ボルト・アクスルシャフトを緩めます。緩めるだけでまだ外しません。
メンテナンススタンドでフロントタイヤを浮かせる
各部緩めたら、メンテナンススタンドを使ってフロントを浮かせます。
ホイールを外す
つづいて、キャリパーを外し、ホイールを外します。アクスルシャフトは12mmの六角レンチが2本必要です。普通の六角レンチセットには含まれていないので、別で用意する必要があります。僕はソケットにしました。
フェンダーを外す
さらに、フロントフェンダーを外します。ボルトを外したらフェンダーを下に、鑑賞する部分はアウターチューブを回しながらかわします。
外したホイールとフェンダーは、邪魔にならないところに。メーターギアが直接接地しないよう、ブランケットの上において保護します。
フロントフォークを外す
フェンダーを外したら、フォーク本体を車体から外します。
ただし、フォークが車体に固定されている間にトップキャップを緩める必要があります。車体から外した後で緩めようにも、力がかけづらいです。また、トップキャップのネジ部分はトップブリッジにより締め付けられており、締め付けられた状態でトップキャップを緩めようとするとネジ山が傷んでしまう可能性があります。
というわけで、緩める順は
- トップブリッジでフォークを固定しているボルト
- トップキャップ
- アンダーブラケットでフォークを固定しているボルト
の順。
最後のアンダーブラケットでの固定ボルトを緩める際、フロントフォークが落ちる可能性があるので、支えておきましょう(下写真では僕が支えています)。
フロントフォークの分解・洗浄
外したフロントフォークを分解し、パーツを洗浄します。
トップキャップを外す
緩めておいたトップキャップを外します。キャップを緩めていく際に上から押さえておかないと、フォーク内のスプリングの力でキャップが飛んでいきます。
インナーパーツを抜き取る
キャップを外したら、中のパーツを抜き取ります。上からスペーサー(金属の筒状のもの)、ワッシャー、スプリングの3点が取り出せます。
フォークオイルを抜く
インナーパーツを抜いたら、フォークを逆さまにしてフォークオイルを排出します。ゆっくりと何度かストロークさせると、さらに出てきます。
使ってるドレンパンは、ストレートの蓋つきのもの。廃油を捨てるときにこぼすリスクが減ってとてもよき。
インナーダンパーのロックボルトを外す
オイルを抜いたら、クランプでアウターチューブを固定して、インナーダンパーを留めているボルトをフォーク下部から外します。
普通はネジロック剤が塗布されていて外すのに力がいるものですが、今回はなぜかスッと外せました。
インナーチューブを抜く
インナーチューブを抜くため、ダストシートとスナップリングを外します。細いマイナスドライバーを使い、インナーチューブを傷つけないように気をつけながら。
その後、オイルシールとインナーチューブを抜きます。勢いよくインナーチューブを引くと、中のインナーチューブに取り付けられているスライドメタルに押されて、オイルシールが外れます。
分解したパーツを洗浄する
分解して外したパーツ類を、パーツクリーナーで洗浄し、古いオイルを落とします。
パーツクリーナーで洗浄すると、パーツクリーナーの気化熱でパーツが冷え、結露が生じます。このまま組むと、フォーク内に水分が入ってしまうことになります。それを防ぐため、ヒートガンで乾かします。
これはじぇーくんに教えてもらったやり方。
外したパーツをチェックしてみます。
シールやスナップリングは、目に見える大きな損傷はなさそう。
インナーチューブのスライドメタル。左が取り外したもので、右が新しいもの。外側のコーティングかわ完全になくなってる?
こちらはアウターチューブに固定されているスライドメタル。左が取り外したもので、右が新しいもの。こちらは内側にコーティングがされているはずですが、これも摩耗してしまっていそう。
インナーチューブを研磨する
また、点錆が見られたインナーチューブを、耐水ペーパーで磨きます。#2000のペーパーで円周方向に磨き、縦溝が入らないようにします。
フロントフォークの組み立て
分解しきれいにしたフロントフォークを組んでいきます。
インナーチューブにスライドメタルを取り付ける
まずは、インナーチューブ下部に、スライドメタルを取り付けます。
今回は純正部品ではなく、NTBの純正互換品を使用。
インナーダンパーを固定する
インナーチューブ上から、スプリングとインナーダンパーを入れ、下から出てきたダンパーの先にロックピースを取り付けます。
この状態でロックピースが外れないようにアウターチューブへ。
インナーダンパー固定用のボルトに新品のワッシャー(O/Hキットに同梱)を取り付け、ネジロック剤を塗布。
アウターチューブを固定し、ボルトを締め付け。
オイルシールの圧入
続いて、インナーチューブ上からスライドメタル、ワッシャー、オイルシール(O/Hキットに同梱)を順に入れていきます。パーツにはフォークオイルを塗布。
オイルシールには上下があり、刻印がある方が上。
オイルシールの圧入には専用工具がありますが、今回は先をなめらかに削った塩ビパイプ+1mの単管パイプで代用。このお手製工具、これまで何度か使ってきましたが、塩ビパイプが割れてきているのでそろそろ新しくするか専用工具を導入するかした方がいいかも。
オイルシールを圧入したら、スナップリング(O/Hキットに同梱)を取り付け。
アウターチューブに切ってある溝にはめるように。
さらにその上からダストシール(O/Hキットに同梱)を取り付け。
フォークオイルの注入
シール類を取り付けたら、新しいフォークオイルを入れます。バリオスの油量は368±2.5ccらしいですが、あとで油面で合わせるのでテキトーに400ccほど入れます。
上からゆっくりと注ぎ入れます。
フォークオイルのエア抜き
インナーチューブを何度かストロークさせて、エア抜き。
インナーチューブをフルボトムさせた状態で上端を手で塞いでそのまま引き上げると、陰圧がかかってエアが抜けやすくなるらしい。
フォークオイルの油面調整
エア抜き後、油面調整ツールを使って油面を合わせます。バリオスの油面は140±2mmらしいので、140mmで。なおこのシリンジ、何度も使いまわしているのでとても固くなっています。「こんな固いシリンジ、はじめて引いた!」という看護師なバイク女子。ごめんて、このシリンジは今回で終わりにするって。
インナーパーツを入れる
油面調整後、スプリング、ワッシャー、スペーサー(金属の筒状のもの)を順に入れます。量を調整したオイルが跳ねないように、ゆっくりと。また、スプリングは巻きがきつい方が下です。
トップキャップの取り付け
最後に新しいOリングを取り付けたトップキャップをつけて、フォークの組み立て完了。
フロントフォークの車体への取り付け
組んだフォークを車体に取り付け、元に戻していきます。
フロントフォークを取り付ける
まずはフォークを車体に取り付け。突き出しは元の0mmとしました。また、締め付けは
- アンダーブラケット部の固定ボルト
- トップキャップの本締め
- トップブリッジ部の固定ボルト
の順に行います。
フェンダーを取り付ける
アウターチューブを少し回しながら干渉する部分をかわし、フロントフェンダーの取り付け。
ホイールを取り付ける
続いてホイールの取付。アクスルシャフトはブレーキ側から通し、メーターギアがある側にナットを取り付け。
キャリパーを取り付ける
キャリパーを取り付けます。パッドを少し押し戻しておくと、楽に取り付けられます。
各部増し締め
最後にメンテナンススタンドからおろし、各部を増し締め。キャリパー、アクスルシャフト、フォークボトムの割締ボルトの順に。
漏れたオイルが付着していたフロント周りを洗車し、作業完了。
まとめ
今回は、バリオスのフロントフォークをオーバーホール(作業のアドバイザー)を行いました。
用意したパーツはこれら。
フォークオイルは、ヤマハのG-10を使用。
その他、基本的な工具やケミカルに加え、ネジロック剤とフォーク油面調整ツールを準備。
あとはオイルシールプッシャーもあった方がいいかも。
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