VTR250のリアブレーキパッドが残りわずかになっていたので、交換しました。今回交換したのは、コントロール性がいいと言われているRKのファインアロイ55です。
それと同時に、キャリパーのブレーキダストの清掃、ピストンをグリスアップして動きを良くするもみ出し、ブレーキフルードの交換を行いました。これらの作業によって、ブレーキタッチや引きずりが劇的に改善され、とても乗りやすくなります!
というわけで、作業手順を順に解説していきます!
キャリパー・ブレーキパッドの取り外し
まずは、キャリパー・古いブレーキパッドを外します。
- パッドピンを緩める
- キャリパーを固定しているボルトを外す
- ブレーキホースのガイドを外す
- キャリパーを外す
- パッドピンを外して古いパッドを外す
1. パッドピンを緩める
まずはマイナスドライバーでフタ(下写真のようなもの)を外した後、5ミリのヘックスレンチでパッドピンを緩めます。この段階では緩めるだけで、ピンは抜きません。抜いてしまうとパッドが落ちてしまうからです。
ちなみにこのパッドピンのフタ、固着しやすいです。外すたびに「こんなに固く締めてたっけ!?」と思うくらい固くなっています。私の場合、そう思って前回ゆるくしていたら、気づいたらどこかにいっていました_(┐「ε:)_
2. キャリパーを固定しているボルトを外す
写真で工具をかけているボルトを、12ミリのメガネレンチで外します。キャリパーを留めているボルトはもう一本あって、他の方のブログを見るとそちらも外しているようですが、この一本だけでキャリパーは外せます。
3. ブレーキホースのガイドを外す
樹脂製のブレーキホースガイドを留めているプラスネジ2本を、スイングアームから外します。ここが留まったままだと、キャリパーの可動範囲が小さくて作業しづらいです。キャリパーが動かしづらい状態で作業してこの部品を破損すると、ブレーキホースがタイヤに当たって破れてしまう危険性もあります。
4. キャリパーを外す
続いて、キャリパーを取り外します。キャリパー後方を持ち上げるように動かすと、外さなかったキャリパー前方にあるボルトを軸として、写真のように上に上がります。この状態でキャリパーをマフラー側にスライドさせると、外すことができます。
なお、右側に激しく転倒したことのある車両は、マフラーが内側に歪んでいて、キャリパーがマフラーに当たって外れないことがあります。マフラーを外側に引っ張るとクリアランスが確保できて、外せますので試してみてください。
5. パッドピンを外して古いパッドを外す
キャリパーを外すことができたら、緩めておいたパッドピンを抜いて、古いブレーキパッドを外します。このとき、キャリパーから金属板を曲げたようなスプリングが外れることがありますが、紛失しないように注意してください。
新旧ブレーキパッドの比較です。使用限界を示す溝が完全に消えており、もっと早めに交換すべきものでした。もうちょっといける、もうちょっといける、とケチっていたら、全然行けていませんでした。
キャリパー清掃
キャリパーに付着したブレーキダストを落とします。これにより、見栄えがよくなるだけではなく、ブレーキの固着を防ぐことも望めます。
- キャリパーをお湯につける
- 10分ほど待つ
- 中性洗剤と歯ブラシで汚れを落とす
- 流水ですすぐ
- 水気を取る
1. キャリパーをお湯につける
汚れを浮かせるため、バケツに張ったお湯の中にキャリパーごとひたします。お湯の温度は、熱いけどなんとか我慢すれば入れないこともないお風呂くらい。もっと熱くても大丈夫ではありますが、後で洗おうにもバケツに手を突っ込めなくなってしまいます。
2. 10分ほど待つ
汚れを浮かすため、10分ほど待ちます。アイスでも食べながらのんびり待ちましょう。
3. 中性洗剤と歯ブラシで汚れを落とす
中性洗剤をキャリパーに直接かけて、古い歯ブラシで汚れを落とします。特にブレーキの効きに直接関係のあるピストン周りはきれいに汚れを落としたいところです。ただ問題は、ピストンの裏側に歯ブラシが入らなくてきれいにできないところ。そういう場合、ピストンを回転させるのですが、下写真のようなピストンツール、ピストンプライヤーといった名前の工具を使いましょう。
この工具は、持ち手を握ると先が開くようになっています。通常のプライヤーのような、持ち手を握って先が閉じるような掴みものは、ピストン外周を傷つけてしまう危険性があります。
キャリパーの中はブレーキフルードという液で満たされており、その液を介してピストンを押し出しています。ピストンとキャリパーの間には、ブレーキフルードが漏れないようにゴムのOリングが入っているのですが、もしピストン外周に傷がついてしまうと、その傷の部分からフルードが漏れたりOリングが傷ついてダメになってしまったりすることがあります。
また、ピストンの向こう側のキャリパー内側を掃除するのに、飛び出したピストンは邪魔ですよね。そういった場合は、ピストンを押し込みます。手で押し込もうにも押し込めない場合は、ブレーキセパレーターという工具を使うと便利です。
この工具、回し手を回すと、2枚の板を広げたり閉じたりすることができます。閉じた2枚の板をピストン先端の隙間に入れて、その状態で広げていくと軽い力でピストンを押し戻すことができます。
バケツに溜めていた水ですすぎながらキャリパーを洗っていき、最終的なバケツの水がコチラ。
きったねー。
4. 流水ですすぐ
洗剤を洗い流すため、流水ですすぎます。ここで洗剤を落としきれないと、後のグリスアップの効果が減ってしまいます。多めの水でしっかりと洗い流しましょう。
5. 水気を取る
洗剤を洗い流したら、しっかりと水気をとります。ウエスやペーパータオル等で拭き取ってもいいのですが、可能ならエアを使って吹き飛ばすほうがベターです。細かい隙間の水分も効率よく除くことができるからです。
ピストンのもみ出し
続いて、ピストンのグリスアップをして動きをよくするための、もみ出しを行います。
- ピストンにシリコングリスを塗布する
- グリスを馴染ませる
1. ピストンにシリコングリスを塗布する
ピストン外周に、シリコングリスを塗布します。ブレーキをかなり使うと、キャリパーに触れなくなるくらい熱くなります。シリコングリスなら耐熱性があるため、問題ありません。また、グリスの種類によってはゴムのOリングをいためることがあるのですが、シリコングリスなら問題ありません。
2. グリスを馴染ませる
塗布したグリスは、ピストンを回して押し戻してまた回して押し出して…、とやりながらピストン全体と中に入っているOリングに馴染ませます。Oリングが経年劣化で硬化していなれけば、グリスが行き渡るにつれて動きがよくなっていき、最終的にはピストンを手で押し戻すことができるくらいにはなるはずです。そのくらいになるまでグリスを塗布して馴染ませて、と繰り返します。
1時間くらい作業を続けてもちっとも動きが改善されない場合、オーバーホールして中の清掃とOリングの交換が必要になります。
最後に、ピストン外周以外の場所に付着した余分なグリスを拭き取ります。パーツクリーナーを使用して完全に落としてください。もしブレーキパッドやディスクローターに付着すると、ブレーキが効かなくなる危険性があります。
ブレーキキャリパーを車体に取り付ける
ピストンがよく動くようになったら、新しいブレーキパッドを取り付けたキャリパーを車体に取り付けます。
- キャリパーにスプリングを取り付ける
- 新しいブレーキパッドを取り付ける
- 外した逆の手順でキャリパーを車体に取り付ける
1. キャリパーにスプリングを取り付ける
ブレーキパッドを外したタイミングやキャリパー清掃のタイミングで外れたスプリングを、取り付けます。取り付け方向を間違えないように気をつけてください。間違えた方向で取り付けると、キャリパーが車体に取り付けられない、ちゃんとブレーキが効かない、といった問題が起こる可能性があります。
2. 新しいブレーキパッドを取り付ける
ディスクローターに当たるパッド面を内側にして、2枚の新しいブレーキパッドをキャリパーに取り付けます。この形のブレーキパッドは非対称になっているので、パッド面にさえ気をつければ取り付け方を間違えることはないでしょう。
3. 外した逆の手順でキャリパーを車体に取り付ける
続いて、ブレーキキャリパーを車体に取り付けます。取り付けは、外したときとは逆の手順になります。
キャリパーを車体に取り付ける
上写真のように、キャリパーサポートの奥の穴に、キャリパーについているボルトを差し込みます。転倒等によりマフラーが内側に歪んでいる場合は、マフラーを引っ張ってクリアランスを確保してください。差し込んだボルトを軸にしてキャリパーを下げると、取り付けることができます。
ブレーキホースのガイドを取り付ける
ブレーキホースのガイドを、スイングアームにプラスネジで取り付けます。
キャリパーを固定するボルトを締める
外していたブレーキキャリパーのボルトを、12ミリのメガネレンチで留め、トルクレンチで締め付けます。ここの規定トルクは22N・mです。
パッドピンを締める
最後に、パッドピンをヘックスレンチ・トルクレンチで締め付けます。ここの規定トルクは18N・mです。また、パッドピンのフタの規定トルクは3N・mです。
ブレーキフルードの交換
ブレーキフルードは空気中の湿気を吸ったりブレーキによる熱が加わったりすることで、劣化していきます。劣化したブレーキフルードを使い続けると、入力した力がうまくピストンまで伝わらなくなってブレーキタッチやコントロール性が悪くなったり、沸点が低くなって走行中にフルードが沸騰してブレーキが効かなくなる”ベーパーロック現象”が起こりやすくなってしまいます。最低でも2年に1回の交換が推奨されています。
- リザーバータンクを外す
- タンク内の古いブレーキフルードを除く
- 新しいブレーキフルードをタンクに注ぐ
- キャリパーから古いブレーキフルードを抜く
- キャリパー・リザーバータンク回りを
1. リザーバータンクを外す
VTR250のリアブレーキのリザーバータンクは、そのままではシートレールに当たってフタが開きません。そのため、タンクを車体に固定している10ミリのボルトを外します。
2. タンク内の古いブレーキフルードを除く
上写真のタンクに入っているブレーキフルードは、約1年ほど使用したものです。もともとは無色透明だったものが、ほんのりと色づいています。この古いフルードは廃棄します。一般的には、ペーパータオル等に吸わせて可燃ゴミとして処分可能です。なお、ブレーキフルードには強力な腐食性をもつ物質が含まれています。素手で触れないように注意し、万が一触れた場合はすぐに洗い流すようにしましょう。
3. 新しいブレーキフルードをタンクに注ぐ
ブレーキフルードはホンダ純正のものを使用しました。最近新たに二輪車用のブレーキフルードが発売されたようです。二輪車用のブレーキフルードは、ゴム製のブレーキホースへの影響が小さくなるように成分が変更されているとのこと。今回私が使ったものは、下の商品写真とはパッケージの色が違う旧製品で、今は四輪車用として販売されているものです。今までは二輪四輪兼用として販売されていたものなので、使えないことはありません。
4. キャリパーから古いブレーキフルードを抜く
リザーバータンクより先の、ブレーキホースやキャリパー内の古いブレーキフルードは、キャリパー側から抜きます。上写真の工具をかけてホースを差している部分(ニップル)から抜いていきます。
ニップルのカバーを外し、8ミリのメガネレンチをかけ、内径4ミリの耐油性ホースを差します。その状態でブレーキをかけ、ブレーキをかけたままニップルにかけたレンチを反時計回りに回して緩めます。そうするとブレーキペダルをさらに深くまで下がり、ホースから古いブレーキフルードが出てきます。これらを確認することができたら、ブレーキはまだかけたままで、ニップルにかけたレンチを時計回りに回して締めます。ちゃんと元通りに締めた後で、ブレーキペダルを何度か踏みます。何度か踏んでいくうちに、ぐにゃぐにゃしていたブレーキタッチがしっかりとしてくるはずです。タッチがしっかりとした状態で、またブレーキをかけてニップルを緩めてフルードを抜く…、と作業を続けていきます。
この作業を繰り返していくことで、古いブレーキフルードが段々とキャリパー側から押し出されていきます。ホースから見える押し出されたブレーキフルードが、色づいたものからきれいな透明なものになってきたら、作業完了です。
リザーバータンクのUPPERくらいまでブレーキフルードを入れて、フタをしっかり閉めて車体に固定しましょう。
5. キャリパー・リザーバータンク回りを水洗いする
先述の通り、ブレーキフルードには腐食性の高い物質が含まれています。もしもブレーキフルードがこぼれて車体に付着したまま放置していると、塗装がはげたりする恐れがあります。そのため、ブレーキフルードが付着していそうなキャリパー・リザーバータンク周りを水洗いしておきましょう。
まとめ
以上、VTR250のリアブレーキキャリパーの清掃、もみ出し、パッド・フルード交換の一連の手順の紹介でした。
ブレーキまわりのメンテナンスをしっかりとしておけば、安心してブレーキをかけられます。その結果、しっかりと止まる・曲がることができるようになるので、ライディングがより楽しくなることでしょう。また、ブレーキダストで汚れやすいキャリパーまわりがきれいだと、バイクを見た他の人に「ちゃんとメンテナンスしているな」という印象を与えることができます。
さぁ、ぜひブレーキのメンテナンスをしましょう!
最後に、今回使用した用品・工具をもう一度まとめておきます。ご参考ください。
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